秋の月は日々戯れに

大泣きがやがて啜り泣きに変わり、次第に勢いをなくしていくのを聞きながら、彼は布団を畳んで空き缶を片付け、彼女は飲み物の用意をしていた。


「コーヒーが苦手だというそのお気持ち、よく分かります。わたしも、コーヒーはあの黒い色を見ているだけで胃が痛くなりそうなんです。だから、ミルクなしにはとても飲めません」


例えミルクがたっぷりだってそもそも飲めないだろ、幽霊なんだから――と密かに心の中で突っ込みながら、彼は空き缶を拾って広げたゴミ袋に入れていく。


「そうなんですか。私はミルクもですけど、砂糖もたっぷりでないと飲めないですね。あのコーヒー独特の苦味が中和されるまで入れまくります」


それはコーヒーなのか?――と心の中で呟きながら、彼はまた一つ空き缶を拾う。


「では、次にいらっしゃる時までには、ココアか紅茶を用意しておきますね。今日のところは、お茶でいいですか?」

「はい!もちろんです。あっ、じゃあ私、次にお邪魔する時にはオススメのレモンティーを持ってきますね。最近のお気に入りなんですけど、生姜も入っているのでこの季節は凄く体が温まるんですよ!それに、とっても美味しいんです」

「それは楽しみですね。体を温めるのは、健康にもいいと聞きます」
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