天神学園のお忍びな面々
猟犬と愛玩犬
「忘れ物、なぁい?」

朝。

美緒が学生寮の部屋の戸締まりをしながら言う。

「おう」

「うん、じゃあ美緒、いこっか」

頷いたレオとディアの背後に。

「おはよう、美緒、レオ、ディア」

赤い道着姿のリュークが立っていた。

約束通り、ディアの護衛役だ。

「……っ」

ディアが、ハッと息を飲んだ後、少しばかり目を逸らす。

それでもリュークは何食わぬ顔。

現在彼は番犬モードだ。

恋い焦がれた姫君ではなく、護衛対象としてディアを視界に捉えている。

私情は挟んでいない。

「ん、それじゃあいこっか」

歩き出す美緒。

その隣をディア、更に隣をリューク。

レオはちゃっかり美緒の反対側の隣を歩いている。

「ちょ、ちょっと…美緒、押さないでよっ」

肘でグイグイ押して、リュークに押し付けようとする美緒に、ディアが抗議する。

「えー?護衛対象は片時も離れない方がいいわよ、ねーリューク君?」

「…近くにいてくれた方が助かる」

「ほら、ね?」

「……」

それでも居心地悪そうに、ディアは少しだけ距離を置いた。

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