お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 ちなみにその笑顔も介添人に言われて必死に作っていたもので、頭の中身は空っぽだった。


(本当に私、社会性がないんだなぁ……こんなことで大丈夫かしら)


 このまま一生、ひとりで生きると思っていた澄花は、このひと月の環境の変化に戸惑うことばかりだ。

 トントン――。

 ドアがノックされて、ガチャリと開く。

 顔を上げると、

「澄花ちゃん!」

 顔を真っ赤にした丸山夫妻が姿を現した。


「あ、おじさん、おばさん」


 澄花はソファから立ち上がって、ふたりを中に招き入れる。


「いやぁ、すっかり酔ってしまったよ」


 花嫁の父として出席した俊樹は、すでにかなり泥酔していた。きちんとフォーマルスーツを着てはいるが、留め袖姿の尚美に、「足がふらついてるわよ」と笑われている。


「お茶を淹れようか?」


 澄花の言葉に、ソファーに並んで座るふたりは首を振った。


「いいのよ、すぐに戻るから」
「そうだそうだ。すごいなぁ、葛城さんは。俺たちにもスイートルームってのを取ってくれたよ。すっごくいい部屋でなぁ……」

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