お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
救いの手


午後八時。


インターフォンが鳴った。


電気もつけていない暗いリビングでソファの上で丸まっていた私は閉じていた瞼を開ける。


ゆっくり瞬きをしているうちにもう一度ベルが鳴った。

間延びした電子音に一瞬、逡巡してから身体を起こす。


力が入らない身体をゆらりと揺らしながら、リビングに備えられたカメラを覗くと宣言したとおり智哉だった。


居留守を使おうかと思ったけれど、深いため息も鳴り続けるベルにかき消されて、結局足が玄関に向いていた。


玄関の明かりをつけないまま、ドアの鍵を解錠する。



扉をゆっくり、手が通るほどの隙間だけ開けた。


スーツ姿の智哉の顔が半分見えた。




「お、いるじゃん」

「……ベルの押し過ぎよ」




口を開けば可愛げのない言葉が出てくる。


いつもなら智哉も応戦してくれるのだけれど、今回は違った。



沈黙とともに私へと視線が降り注いでいるのが俯いていても痛いくらいわかる。




「何があった?」

「別に」

「そんな鼻声で何もないわけねぇだろ」



指摘されて閉口する。



自分でも鼻声だとわかるほどだから気づかないわけがない。



やはり居留守を使うべきだった後悔した。



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