今宵、エリート将校とかりそめの契りを
背中合わせの夜
朝の訪れを知らせる鳥の囀りが、琴の耳をくすぐった。


不思議なほど、全身がポカポカと温かい。
まるで湯たんぽを抱いて寝ているようだと思ったのが、その朝の意識の始まり。
しかし覚醒に近付くにつれて、抱いているのは自分ではないと気付いた。


(包まれてるのは、私……!?)


そう感じた瞬間、琴は勢いよく目を開けた。
途端にギョッとして息をのむ。


総士の綺麗な寝顔をすぐ目の前に見つけて、琴の胸はドクッと大きな音を立てた。
彼の寝顔を、意識してしっかり目にしたのは、これが初めてだった。


陸軍将校一の美男子と言われる総士の穏やかな寝顔は、心臓に悪いほど美しく破壊力がある。
その上、彼の腕に囲い込まれて眠っていたことを自覚して、琴の頬はカアッと熱を帯びて火照った。


自分の姿を確認しようと、琴は慌てて布団の中で身体を見下ろした。
互いに夜着を身に着けているのを自分の目で見て、ホッと息をつく。


そして、寝ている間ずっと、固く握っていた手を開こうとした。
力を込めすぎていたからか、指に少し強張りを感じる。
それでもしっかり開くと、そこには昨夜総士がくれたキャラメルが一粒残っていた。


(そうだった、昨夜は……)
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