きみに初恋メランコリー

・フェンス越しの彼女



だって。

どうしたって、放っておけないんだ。



「……あれ? 花音ちゃん?」



今日もハードな部活の休憩中。

ふと目を向けたフェンスの外側に見知った顔を見つけて、思わずつぶやいた。

そこにはなんだかぼんやりした様子でフェンスに手をかける、花音ちゃんが立っている。

俺はタオルを手にしたまま、彼女へと近づいた。



「花音ちゃん!」

「え……っあ、奏佑先輩」



声をかけた俺にハッとしたように、花音ちゃんが目をまたたかせる。

その反応は、ほぼ正面から近づいたにも関わらず、まるで今さっき俺の存在に気がついたかのようで。

俺はつい、首をかしげた。



「花音ちゃん、なにかあった?」



とっさに出てきてしまったその問いに、彼女は一瞬目を丸くする。

だけどもふるふると、首を横に振った。



「いえ、……どうしてですか?」

「や、なんとなくね」



そっか、うん。気のせい、かな。

なんとなく、まだ釈然としないながらも。気を取り直して、俺は花音ちゃんに向き直った。
< 63 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop