お見合い相手は無礼で性悪?



恐る恐る、石橋を叩いて渡るような


いや・・・


石橋を叩き割りそうな関係


凄く嫌なヤツと結婚させられると
もがいていたことが嘘のように

高鳴る胸は彼を意識している変化に繋がっている


『で、君からの誕生日プレゼントは?』


前髪をかきあげる大きな手と
真っ直ぐ私を見る切れ長の目に胸が苦しい



『あ、あの、えっと・・・』どうしよう


何も考えていないことに慌てるだけで
プレゼントを用意していない事実は変わらない


『そうだよな。急に言われても、だよな』


彼はハハと笑った後、急に真面目な顔つきになった


『じゃあキスしてよ。誕生日忘れたお詫びに・・・君から』


『・・・え?・・あの、え・・・?』


キスって、そんな・・・どうして


顔から火が出そうなほど
全身の熱が顔に集まってくる

どうして?


躊躇う私に


『ほら、早く』


彼はソファの背もたれをギシッと鳴らして
深く腰掛けると目蓋を閉じた

無防備な姿がこれまでの彼とは違って見えて
少し肩の力が緩む


『サァ』


何度もそう急かす声に
少しずつ覚悟を決める

ゆっくりとバランスを保ちながら近づいて


・・・大丈夫

おまじないを唱えるように自分に言い聞かせる


目蓋を閉じたまま待つ彼の正面までくると
緊張のあまり震える身体に泣きそうになった

それでも、逃げられない・・・

諦める気持ちと奮い立たせる勇気に

息を止めた


唇が触れる直前に自分もそっと目蓋を閉じて

・・・このまま真っ直ぐ


上手くいくはずの、それは


『・・・っ』


唇より先に鼻と鼻がぶつかった


慌てて体勢を立て直して離れると


『真っ直ぐきたら鼻がぶつかるだろ?』


クスッと笑った彼に手を引かれ腕の中へとダイブした


『・・・やだ』


意に反して

膝の上にストンと座らされた身体と
頭の後ろに回された手


間近で見つめ合うことなんて無かったから


イキナリの近距離に視線が泳ぐ・・・

瞬きも忘れて固まった私に


『さぁ、ほら』


彼はまたも目蓋を閉じて催促を始めた

こうなったらキスをするまで終わらない
それなら・・・と覚悟を決めて

今度は鼻が当たらないよう

ゆっくりと距離を詰めて


啄むように触れ


サッと離れた


『・・・っ』


目標を達成したからには一刻も早く距離を置きたい

膝の上に横抱きされるという恥ずかしい状態から抜け出したくて立ちあがろうとしたのに


膝の後ろに手を入れた彼は
あろうことかそのまま立ち上がった




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