契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
プロポーズ
黒いスーツの人波が改札に吸い込まれ、同時にまた改札から吐き出されてくる。

そんな忙しない駅のそばで、なぜか壁ドンをされている私。

…いや、壁ドンじゃないな。壁トンだな。仕草がとてもスマートだから。


「俺と契約結婚しないか?」

「…はい?」


壁に手をつき私を見下ろすのは、身長180センチ越えの長身。

無造作に流した漆黒の髪。印象的なくっきり二重の瞼。細い鼻筋と薄めの唇にシャープな顎のライン。

整った顔立ちで院内随一のイケメンと言われる内科医の風間 悠(かざま ゆう)先生。33歳。

『女嫌い』で有名な男。


そして壁に背をもたれ、彼の姿を訝しく見上げる私は、身長154センチと小柄。

セミロングの黒髪はカラーリングをしたことがない天然もの。下がり眉に丸くてくりっとした目は『小動物みたいでかわいい』なんて言われることはあるけど、美人だと言われたことは残念ながらただの一度もない。

管理栄養士の相沢 凛(あいざわ りん)。28歳。

どちらかと言えば地味なタイプの女。


なにがどうしてこうなったのか、話は数時間前に遡る。


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