契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
「北川を悪く言わないでください。
なにも知らない悠さんにそんなふうに言われたくない！」

私が語気を強めると、戸惑ったように悠さんは眉をひそめた。

悠さんはヤキモチを妬いているの？

それは契約結婚の夫婦として当然のことなの？

『裏切り』ってなに？　

ニセモノの夫婦をしている私たちが、異性と飲みに行くのは裏切りなの？

疑問符だらけだよ。

「…契約結婚のルールが、私には全然わからない。
どう振る舞っているのが正解なのかわからない。
普通の夫婦じゃないのに…どうせ偽物の夫婦なのに…っ」

自分で言っていて悲しくなるくせに、言わずにはいられない。

もう限界だって心が叫んで、堰を切ったように涙が零れていく。

涙を拭うより先に、悠さんの腕が私を包んだ。

「…俺が、本当は最初から凛を好きだったって言ったら…
契約結婚なんてただのこじつけだったって言ったら、どうする？」

「…え？」

私の耳元で囁いた悠さんは、腕にぎゅっと力をこめたあと、ゆっくりと手を離した。

「すまない。北川くんは凛にとって大事な同期なのに。
本当に悪かった」

悠さんは目を合わせることなく背を向けて自室へ入って行った。
 
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