契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
「どうしてですか?この前あんなに元気そうに…」

「彼女は喉が痛くて、嚥下がしづらい状態で近くの内科に行ったら、ただの風邪だと言われたそうだ。
だけど実際は急性喉頭蓋炎で…
救急でウチに運ばれてきたけど、手遅れだった」

消え入るような声でそう言ったあと、悠さんは大きな右手で目元を覆った。

「すぐにウチの病院に来てくれていたら…耳鼻咽喉科との連携もとれたし、詳しい検査で見つけられたかもしれないのに。
…助かったかもしれないのに」

『すぐにウチの病院に来てくれていたら…』

それができなかった理由を、悠さんも私もわかっている。


ウチの病院は、地域医療支援病院。

紹介状持ってないと、初診時の負担額が大きくなる。

紹介状がないと受診すらできない診療科だってある。

そうやって敷居が高くなっていて、気軽に受診しづらいシステムになっていることは間違いない。

仕方ないことなのだ。

そうすることで地域の個人院と大病院の機能連携が成り立っているから。


「悠さん…」

どう声をかけていいのかわからなくて、思わず腕をぎゅっと掴んだ。

「…凛、肩貸して」

「…いいですよ」

悠さんは私の肩に頭をコツンとつける。

私は悠さんをなんとか癒してあげたくて…

なんとか悲しみを減らしてあげたくて、その背に腕を回して、何度も何度もなでた。


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