契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
周りにざわざわと人が集まって来るのがわかったけど、『大丈夫です』なんて起き上がることは到底無理そうだ。

私、死ぬのかな…

生まれて初めてリアルによぎる『死』の感覚。

悠さん…

私、悠さんに謝らなきゃいけないのに…

「凛!」

不意に聞こえた、耳慣れた声。

重い瞼を少し開いたら、悠さんの姿があった。

「ゆ…うさ…」

声にしたいのに、うまく声にならない。

「胸が痛くて呼吸がしずらいんだな?」

私の白衣のボタンをはずし、下に着ていたTシャツの内側に聴診器らしきものが何か所か当たった。

「…まずいぞ。担架なんか待ってる余裕はない。俺が運ぶ」

早口の声が聞こえたと思ったら、重い身体がふわっと浮きあがって目が回った。

「凛、この前喉が痛いって言ってたけど、それからもずっと風邪のような症状はあったか?」

小さくコクンと頷いたら、悠さんは険しい顔をして唇を噛んだ。

「ゆ…う」

「凛、しっかりしろよ。絶対助けるからな!」

悠さんの腕に揺られながら、私は意識を手放した。

< 151 / 175 >

この作品をシェア

pagetop