「…マジびっくりしたんですけど」

「…ごめん。いつ言おうか迷ってたんだけど」

ストローをチューっと吸いながら、じとっと私を見つめる土屋美咲(つちやみさき)。

同じ病院で働く同期で、形成外科病棟の看護師をしている。

はあーっと唸りながら腕を組み、椅子の背もたれにトンと背中を預けた美咲は少しの間黙り込んでいた。

私はそれを気にすることもなく、コーヒーを一口飲んだあと、パンケーキにも手を伸ばした。

今日はお昼休みを潰して仕事をしていて、昼食を食べる時間がなかったから、お腹が空いているのだ。

「女嫌いのイケメン先生と結婚ねえ。どうしたらそんなことになるのよ」

「…まあ色々あって意気投合してね」

美咲はサバサバしていると言うと聞こえはいいけど、わりとアバウトな性格だ。

受け入れが早いからあまり言及してはこない。

いくら親友相手でも、契約結婚だなんて口が裂けても言えない。

「よくわからないけど、仕事一筋でイケメンに興味がなかったからこそ、女嫌いの先生の心を開いたわけね」

「まあ、そうなのかもね」

ふうん、と言いながら美咲もフォークを添えて器用にパンケーキを切り始める。

端にホイップクリームが添えてあり、その上にはミントの葉。

冷凍のミックスベリーもちりばめられている。

うん、決して悪くはない彩りだ。

「まあ先生のファンがどう思うかってとこよね」

「どう思うかって?」

「女嫌いの風間先生は誰のものにもならないから、『みんなの風間先生』みたいな暗黙の了解があったじゃん。
あんた、先生のファン全員を敵に回したかもね」

恐ろしいことを言って笑いながら、美咲はパンケーキの大きな一欠片を口に押し込んだ。