契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
その夜、マンションの部屋のキッチンに立っていた私は、玄関ドアの解錠音を聞いて、鼓動が高鳴るのを感じた。

…帰ってきた。

慣れていないからちょっと…いや、だいぶまごまごしてしまう。

「ただいま」

声と同時にリビングダイニングのドアが開き、私は野菜を炒めながらカウンター越しに風間先生のほうをちらっと見る。

「おかえりなさい。ちょっと待ってください。もうすぐご飯が…」

言いかけた直後、私の背後に来た彼が腰に腕をぎゅっと回す。

「ただいま、凛」

低く穏やかな声が耳元の空気を揺らし、何が起きたのかわからず一瞬フリーズした。

…だけど、すぐに全身が沸騰するように熱くなる。

「せ、先生、フライパン危ないです。火傷しちゃいます」

つっかえて言いながら遠慮気味に腕をはずしたら、「悪い悪い」と先生は笑った。

びっくりした…動揺して私のほうが火傷してしまいそうだ。

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