契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
「お疲れさまです」

ナースステーションに声をかけるものの、看護師たちは私を一瞥するだけで、なにもなかったようにまた仕事を始める。

…どうしたんだろう。何かあったのかな。

「河村さん、河村さん」

河村さんはとても親身に話を聞いてくれる女性看護師のひとりだ。

だけどなぜか今日は面倒くさそうにしぶしぶ歩いてきた。

「あの、患者さんたちの食事の様子について聞かせていただきたいんですけど」

「…そういうの、他の人に聞いてもらえます?」

「え…」

いつもは朗らかなはずの河村さんの声が冷たい。

河村さんは目も合わさずにそのままくるっと背を向けて去って行った。

ほかの看護師に声をかけるも、誰も返事をしてくれない。

わけがわからないままキョロキョロと辺りを見回し、ちょうど患者の部屋から戻ってきた油井さんを見つけた。

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