「……ん、りん」

耳元で聞こえる声で、心地良いまどろみの中から引っ張り出された。

目の前には、私を覗き込む先生の顔がある。

「…あ、おかえりなさい」

眠い目をこすりながら起き上がり、あ、そうだ、と思い出した。

「悠さん、今日病棟で…」

言葉にする前に、ふわりと先生の温もりに包まれていた。

「悠、さん?」

「…なんで言わなかったんだ。
そういうのは、真っ先に俺に相談するもんだろ」

病棟で聞いた厳しい声ではないけど、やっぱり少し怒っている感じがする。

「…助けてくれたのは嬉しいけど、あれじゃ悠さんの立場が悪くなっちゃいます」

「俺の立場なんかどうでもいい。
…悪かった。結婚のデメリットなんてないと思ってたのに」

先生の胸の中で、首を振った。

「…ありがとう悠さん」

身体が離れて、先生はやさしいキスをくれた。

「…これはただいまのキス」

「え?」

先生は私の横髪を耳にかけ、頬にキスをくれた。

「…こっちはごめん、のキス」

…ヤバい。

リンゴ病みたいに頬が赤くなっている気がする。

思わず手で両頬をおさえたら、先生は私の行動の意味を見透かしているようにくくっと笑った。