契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
「…あのっ悠さんはいつか子供が欲しい、ですか?」

胸を少し押し返し、目線をそらしたまま声を上擦らせる。

思いのほか長い沈黙を挟んだあと、悠さんはさっきまでとは違う低いトーンで言う。

「これは契約結婚だ。無理に子供なんか望まない」

ズキンと大きな痛みが胸に走った。

「…そう、ですよね」

忘れていたわけじゃない。

だけど、悠さんの口から『契約結婚』という言葉が出てくると、現実に引き戻された気分になって悲しくなる。

いつか悠さんの子供を産んで、子供も一緒に食卓を囲めたら、それはとても素敵なことなんじゃないか…

なんて一瞬でも思った自分がバカみたいだ。

「たまには外食しよう。ついでに買い物もしなきゃな」

なにもなかったように悠さんは明るく言う。

「…はい」

落ち込んでいるのがバレないように、無理やり微笑んで見せた。
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