夕方、病棟回りから戻って来たらしい小沼さんが、首を傾げて腑に落ちないような顔をしながら私の耳に顔を寄せた。

「相沢さん、上村先生があとで休憩室に来てほしいって」

「え?」

「外科から内科に移る患者さんの食事の相談だって。
珍しいよねえ。先生から言ってくるなんて」

嫌な予感しかしない。

だけど、医師に呼ばれて断る栄養士なんて聞いたことがない。

仕事は仕事だ。



「失礼します」

おずおずと休憩室へ入ったら、中には上村先生の他にも数人の先生がいた。

ホッとしつつも上村先生の元へ向かおうとしたら、先生は立ち上がって、すれ違いざまに

「こっち」

と小声で呟いた。

その背についていきながら、

「どこに行くんですか?」

と問いかけるけど、内緒、と言って教えてくれない。


先生が静かにドアを開けたのは、院内の小さな図書室だ。

看護師や医師向けの参考書がたくさん置いてあり、持ち出し禁止のため、表向きは6時以降出入り禁止になっている。