恩返しは溺甘同居で!?～ハプニングにご注意を!!

10. 『恋』かどうか分からない。

　
　ピピピピピピ……

　枕元の携帯電話のアラームが鳴っている。
　目を閉じたまま手探りでそれを掴み、アラームを止めた。

　「も、もう朝……。」

　なんだかいつもより眠たくて、「もうちょっとだけ」と寝返りを打とうとしたところで、違和感を感じた。
　
　なんかお腹の上が重い…

　ゆっくりと目を開くと、寝顔の修平さんのドアップが。
　彼は抱きかかえるように私に腕を回している。

　なななな、なんで～！？

　状況を呑み込めなくて、頭の中はパニックだ。
　彼の両腕が私のお腹を挟んでいるので身動きも取れず、背中を冷たい汗が流れた。

　息を詰めて、目の前の綺麗な顔を凝視する。
　寝ていても充分に魅力的な彼の顔を眺めながら、次々と昨日の記憶が湧いて出て、頭が爆発しそうだ。
　動揺のあまり、目の前の寝顔から目を逸らした。
　
　私…あのまま寝ちゃったの！？

　私の記憶はベッドサイドに腰かけたまま修平さんに抱きしめられたところまでで途切れている。
　あんなに動揺していた自分が、彼の腕に抱かれたまま眠ってしまったなんて、俄かには信じられない。
　
　昨夜最後に見た、彼の表情が脳裏に浮かんだ。眉間にしわを寄せて寂しそうだった彼の瞳は、今は閉じられているけれど、寝顔は健やかだ。

　「ちゃんと眠れたのかなぁ…？」

　「眠れたよ。杏奈のお陰で。」
　
　小さく声に出した疑問に、答えが返ってきた。
　びっくりして視線を戻すと、閉じられていると思っていた彼の瞳と重なった。