恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
2. 今日の運勢は最下位です。
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 今日は朝からついていなかった。
 目覚まし時計の針が2時25分で止まっていた。電池切れかも。
 念のためにセットしてある携帯のアラームを布団の中で止めて、寝ぼけ眼で時間を見る。
 いつもより15分遅い時間に飛び起きた。
 
 朝の15分はかなり大きい。

 慌てて着替えてからお湯を沸かしてインスタントコーヒーに注いだら、お湯が跳ねてコーヒーが白いブラウスに散った。

 「あ~、もう!!時間がないのにっ」

 大きな独り言を響かせながら、バタバタとブラウスのコーヒー染みに漂白剤をかけて手洗いをしておく。
 このひと手間だけで全然染みの落ちが違うのだ。

 コーヒーを片手に食パンをかじりながらテレビを付けた。
 毎朝この時間に情報番組の天気予報をチェックするのが欠かせない日課。

 「今日は晴れかぁ。じゃあ自転車で行けるね。」

 コーヒーでパンを流し込みながら、再び独り言が漏れる。

 私は宮野杏奈。23歳。
 去年大学を卒業して市立図書館に司書として就職した。
 本が好き、読書なら雑誌から児童文学、サスペンス、恋愛小説、なんでも来い、というくらいの活字中毒だ。
 中でも好きなのは時代小説。江戸時代を舞台にした人情ものや怪奇小説なんかには目がない。
 そんな本の虫な私の念願叶って、図書館司書に採用された時は、本当に涙が出るくらいに嬉しくて喜びも声にならないくらいだった。

 テレビを見ながら朝食を口に詰め込んでいるのは、狭いけれど快適な我が城。一人暮らし用の1Kでまだ住んで一年ちょっとしか経っていない。
 実家は同じ県内にあるけど、勤め先の図書館からは電車で一時間以上かかる。大学は家から通っていたので、社会人になったきっかけに一人暮らしをすることに決めた。
 
 私は一人っ子で、両親は心配と寂しさからかすぐに賛成はしてくれなかった。
 でも最終的には二人とも私の自立に納得してくれて、母は「自分が決めたことならしっかりやってみなさい」と背中を押してくれ、父はちょっと涙目になりながら「何かあったらすぐに帰っておいで」と優しく送り出してくれた。
 我が家の父と母はよそのうちとは正反対っぽくて変わってるな~、なんてのんきに思いながら、笑って「行ってきます」と言って実家を出た。

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