恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
6. 自分で頑張るって決めたから…
 __________________
 _______________
 ____________


 今日二度目の桜並木の河川敷を、今度は瀧沢さんに借りた自転車で自宅アパートの向かっている。
 早朝の静謐な川面に映る桜も美しかったが、少し陽が上って周り活動時間に入って来た雰囲気の桜もやっぱり好きだ。
 通勤や通学の人、犬を連れた散歩の人、色々な人が桜並木の下を行き交う。
 いつも同じように通る時間帯の道なのに、進む向きが違うだけで新鮮に感じる。
 瀧沢さんの家から私の家に向かう途中に、私の職場である図書館がある、という位置づけになっていることに改めて気付いた。

 穏やかな春風に吹かれながら、ゆっくりと自転車を漕ぎつつ、私は朝の一幕を振り返った。

 
 
 瀧沢さんが入れてくれたほうじ茶を飲んだ後、彼の要望に頑張って応えたけれど、あまりの羞恥に耐えきれずに部屋に逃げ込んだ。
 
 ドキドキと鳴り続ける胸を押さえて、呼吸が落ち着くのをジッと待った。

 「電話、入れなきゃ…。」

 私の今日の勤務は遅番だから11時半に図書館に着けば十分間に合うのだけど、アパートの部屋を見に行った後にやらなければならないことがおそらく沢山あると思う。
 
 もしかしたら出勤時間に間に合わないこともあるかもしれないし、なにか上司の許可を取らないといけなくなるかもしれない。
 まず第一報を連絡しなければ。
 
 昨日、火事の連絡を管理人さんから受けた直後は、完全にパニックになってしまってそんなことは考えられなかった。
 でも、今朝アンジュと散歩に行ってから大分気持ちが落ち着いた。
 あの早朝の散歩が私の身も心も洗ってくれたような気がする。

 
< 49 / 283 >

この作品をシェア

pagetop