極悪プリンスの恋愛事情
岸本くんに誘われたのは私だって、皐月には言った方がいいのかな………。
でも、一緒にダンスを踊るだけの約束だし、深い意味がないのも理解している。
だからこそ、言うか言わないかの気持ちが交差して、ぐるぐる頭を悩ませていた。
どうせ黙ってればわからないんだろうから、このまま知らないふりを続けてもいいかもしれない。
余計なことを言って変な誤解を招くのも嫌だし、秘密にしていた方がちょうどよさそう。
うん、そうしよう。
溢れかけた言葉をぐっと堪えて、口の奥で飲み込んだ。
この場に岸本くんがいなくてよかった。
言いふらすような人ではないだろうけど、万が一ってこともあるからね。
彼が片付けに参加していなくてよかったと胸を撫で下ろした。
あの後「疲れたから片付けはサボる」ってすぐに別れちゃったし、岸本くんが今どこにいるのかはわからない。
あの真面目な岸本くんがサボるなんて、よっぽど疲れたんだろうな。
なんたって仕事中はずっと女の子たちの相手をしてたんだもんね。