極悪プリンスの恋愛事情


「お前さ、わりと本気できもいんだけど」

「ひゃあ!?」


絶賛浮かれ中だった私の背後から、当事者の凛くんが現れた。


ショーウィンドウ越しでも伝わる冷たい視線が私の羞恥心を煽ってくる。

その現実は振り向いても変わらない。


大袈裟にため息を吐きながら「きもすぎて声掛ける前に帰ろうかと思った」と、きつい一言。


「わー!ごめんなさいごめんなさい!大人しくするから帰らないで!!!」


「うるせーな。帰んねーよ」


必死に腕を掴んだら呆気なく振り払われた。

せっかくのデートなのに初手でやらかすとは、なんという失態。

早く挽回してラブラブデートを目指さなきゃ……!


「んで、どこ行くか決めてんの?」


顔色ひとつ変えずに凛くんが問いかける。

鞄からチケットを取り出して「これ!」と、凛くんの前に突き出した。


「なんだ映画か。随分と地味だな」


「初デートは映画がオススメって雑誌に載ってたから……………じゃなくて、泣けるって話題だったから気になってて!」


「ふーん」


< 209 / 313 >

この作品をシェア

pagetop