お見合い結婚狂騒曲
「出汁と肉団子の完成度は、店に出せるほどだ」

だが、なぜ私の手料理は食べられるのだ?

不思議に思いながらも、祖母直伝の鍋を褒め讃えられるのは凄く嬉しい。
それを彼に言うと、「僕の祖母も料理上手だった」と懐かしそうに目を細める。

このお方、本当にグランドマザー・コンプレックスだ。
私を好き、というより、相変わらず私の声が好きみたいだし……ああ、だから食べられるんだ、と思い至る。

それってなんだかなぁ、だが、まぁ、一応、私たちのお付き合いは順調だった。
ーーそう、あの日まで……。



それが起こったのは節分の日、二月三日のことだ。

豆まきに恵方巻き、今日は『まきまきの日』だな、と朝からちょっと浮かれていたのだが……。

「それにしても、いつになく大量ね」

ローテーブルの上の大皿を見つめ、公香が感心したように言う。

「食べたいんですって」
「葛城さん?」

ううんと首を横に振る。

「葛城さんのお祖父様」

そう、海苔巻きを作っている時に電話があったのだ。開口一番、桜と話しているようだ、と嬉しそうだった。

「で、今、何しているのか聞かれたから、恵方巻きを作っています、と言ったら食べたいって」

お抱えシェフがいくらでも作ってくれるだろうに……。
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