お見合い結婚狂騒曲
「赤尾のお爺ちゃまもお婆ちゃまも、喜んでたでしょう」

心から二人は喜んでいた。

「私と会うとね、いつも真央のことを宜しくって仰るの。老い先長くないからって。あんなに元気なのにね」

公香の顔がクシャッと歪む。涙を堪えているようだ。

「で、お父さんとお母さんからは? お祝いの言葉、あった?」

それを誤魔化すように勢い良く言う。

「あったよ……おめでとうって言ってくれた」

他人同士よりももっと希薄な親子関係だが、血の繋がりは切れない。だからこそ、新しい家族を持つ二人に遠慮してしまう。

「でも、結婚式には招待しない」
「そうなの」

公香はこういう時、反対だとも賛成だとも言わない。

「それが本当の気持ちだったら、そうすれば」

こういう出来た女だ。

「うん。本心」

ーーあの日……葛城圭介の父、圭二氏は何を思ってあの会場に来たのだろう。

追い出された彼は、そのまま療養施設に送り返されたらしい。

一瞬だったが、彼の瞳に慈愛の色が見えたような気がした。彼もまた、本当は葛城圭介にお祝いを言いたかったのでは……希望的観測に過ぎないが、そう思いたい私がいる。
< 130 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop