君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
雨に濡れた手紙



人気のない校舎裏で、ふと足を止めた途端振りだした雨。

細かい雨粒が無数に通りすぎる視界の中、踊るようにはためいた白。


渡り廊下を歩く、道着姿の彼を見つける。

その隣を、彼と同じ格好の女子生徒が同じ歩調で歩いていた。


声を、かけようと思った。

なのに喉が張りついたように、言葉は出てこない。


その時強く風が吹き、あたしの手の中のものを奪っていった。

ひらりと舞い上がり、湿った地面に滑るように落下したそれを、あわてて拾い上げる。


そして顔を上げた時、彼らは廊下を渡りきり、校舎の中へと消えてしまった。


白い、残像だけをそこに置いたまま。



五月雨はあたしの肩と頬を冷たく濡らし、

汚れた手紙とひっそりと咲く紫陽花を、淡く滲ませながら降り続いていた───……。







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