イケメン医師は今日も新妻が可愛くて仕方ない
伊吹side


俺が居酒屋についた時、珍しく酔っ払って出来上がった千花が同僚の看護師に話を聞いてもらっていた。

「親戚でも、年下の高校生でも、あの子は伊吹が好きな訳でしょ?気があるのが分かってるのに一緒に居られるとモヤモヤするの!あーもう!私はいい大人なのに心狭いよぉ」

そう言うと、目に涙を溜めながらグイグイと飲んでいる。


そして零すように言った、千花の言葉が胸に刺さった。

「ね、こんなんじゃ伊吹に嫌われちゃう。でもいつもふたりで過ごしてた部屋に一人でいるのは寂しい。あの広い家に、一人なのは嫌だよ……」

その千花の言葉に、俺は千花は分かってるから大丈夫と甘えてしまっていたことに気付いた。

そして続く千花の言葉に、目を見開いてしまうことになる。

「今日も帰ってこないかな。退院するまで帰ってこないかな。それでも我慢しなきゃいけないよね。これから先こんな事いくらだってあるもんね。お医者さんの奥さんって、そういう事だもんね」

そう最後に呟くと、限界がきたのか寝てしまった千花。

新婚早々から一番大切な千花に、こんな事を言わせるなんて……。

寂しさや我慢をさせるために、一緒になったわけじゃない。

俺はホントに、何をしてたんだろう……。

少しでも頑張れば、ほんの少しの距離の自宅に帰ることくらい出来たのに。

同じ職場で働いているし、全く会えないわけじゃないからと。
そんな所で甘えて、大切な人に寂しい思いをさせるなんて……。

帰れなくてもせめて、隙間で声を聞くくらいすれば良かったんだ。

俺は千花に対してしてしまったことに、大いに反省して凹んだ。
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