その手が離せなくて

真実

「打合せ行ってきま~すっ!!」


意気揚々と事務所を飛び出して、エレベーターに飛び乗る。

今にも零れそうな鼻歌を抑え込んで、雲一つない青空を見つめた。


「えらいご機嫌だな、望月」

「そうですか?」


一緒に一ノ瀬さんの会社との仕事を担当している先輩が、どこか不思議そうな顔で私を横目に見てくる。

それでも、テンション上がりっぱなしの私は明るい声で返答した。

天気がいいからですよ。なんて、訳の分からない事を付けくわえながら。


週に何度かある、打合せ。

彼の会社とのタイアップ商品だ。

彼というのは、もちろん一ノ瀬さんの会社。


「早く行きましょう!!」


まるで子供の様に駆けだした私を見て、先輩が目を丸くする。

それでも、今の私は周りの目なんて気にも留めない程、彼に会いたい気持ちで溢れていた。
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