呆れるくらいに君が恋しい。

夏木 彩ver

「せーんぱい!おはよう。」
今日も朝からテンションが高い。
昨日、押し倒された事は無かったかのように
いつものように話しかけられてホッとする。
「おはよう。」
軽く返して教室に入ろうとすると、
腕を掴まれる。
咄嗟に掴んだかのような手は
少し離れ、今度は優しく掴まれる。
「昨日はごめんなさい。」
昨日。
それはきっと押し倒した事なのだろう。
“別に気にしてない。”
そう言うつもりで、
でも感情を表に出すのが苦手な私は、
そう言わずに話を変えた。
「昨日言ってたよね。
いつまで好きでいるつもりかって。」
少し驚いて、でも頷いた君に
1日考えて出た答えを伝える。
「そばに入られる限りは
この気持ちを告げずにそばにいたいの。
例え苦しくても辛くても
アイツの前で笑ってられる限りは。」
そっか。
そう言って笑った君は
少し吹っ切れたかのような表情で。
「じゃあ、先輩が笑えなくなったら
俺のとこに来ればいい。
今まで頑張った分、優しく甘やかしてあげる。
でも、その後は容赦しませんから。」
彼の何でも見透かすような目が苦手だ。
私のことを何でも分かってるような話し方も。
だから、目を逸らしていたのに
最近はなぜかその目を見てしまう。
私を見つめた彼はまた笑って
「佐和田先輩のことなんて
思い出せなくなるくらいに
きっと、俺のこと
好きにさせてみせるから
待っててくださいね。」
彼の自分に自信があるような態度に
ちょっと、ほんのちょっとだけ、
ドキッとしたのはヒミツだ。
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