クールな公爵様のゆゆしき恋情2
アレクセイ様の言う通り、この状況では鉱山の件を先に対応せざるを得ない。

「分りました。そういった事情なら子供達の事が後になってしまっても仕方がありませんね」

だけど、リンブルグ孤児院の事を思うと、胸が痛む。

そんな時、アレクセイ様が思いがけないことを言い出した。

「リンブルグの件は、鉱山の問題の目処がついたら対応するが、それまでの間はラウラがフォローしてあげたらどうだ?」

「え……私が?」

「ああ、ラウラは子供達のことが心配なんだろう?」

アレクセイ様は事もなげに言うけれど……。

「とても心配ですけど、私には命令権がありません」

フェルザー公爵直轄の孤児院ならまだしも、ここはリードルフ地方。リンブルグ孤児院は、この地方の領主ヒルト男爵の管轄にある。

院長に命令できるのはヒルト男爵か、その主君であるフェルザー公爵アレクセイ様のみ。
私はアレクセイ様の妻だけれど、リードルフでの権限は無いのだ。

だからルカの訴えに慌てながらも、院長に何か言うことは出来なかった。

「正式な命令系統としてはそうだが、実際には公爵の妻の言葉は重要視される。大掛かりな待遇改善は無理だとしても、ラウラが気にかけている限り、子供達に無理な労働を強いることは誰にも出来なくなる」

「確かに一般的には公爵夫人の影響力は強いですけど……」

それは公爵夫人としての実績があってのこと。

私のように嫁いで間もない新米公爵夫人の言うことを、皆が聞いてくれるのか心配だ。

「ラウラは立派な公爵夫人だ。俺の妻になる為に厳しい教育も耐えてくれたんだろ?。自信を持て」

「……そうですね。どうなるか分りませんが、アレクセイ様が動けるようになるまでやってみます」

弱気になって、迷ってる場合じゃない。
今、子供達を守れるのは私しかいないのだから。

私の返事に、アレクセイ様は嬉しそうな笑顔になる。

「ラウラが嫌じゃなかったらヘルミーネにも相談してみるといい。院長のことも良く知っているはずだから、助言をくれるはずだ」

「……はい。相談するかは分りませんが、私がリンブルグ孤児院に出入りすることはヘルミーネ様にも話しておきます」

アレクセイ様の申し出に、私は少し複雑な気持ちになりながら答えた。

私にはヘルミーネ様が手助けしてくれると思えなかったから。
< 50 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop