クールな公爵様のゆゆしき恋情2
「公爵夫人のご意向は承りました。ですが直ぐに改善するのは難しいかと……現在採掘場は繁忙期となっており、猫の手も借りたい状況なので、子供一人の労働力も無駄に出来ないのです」
「それ程忙しいのなら別に大人を雇ったらどうですか? 聞いた話では、短期間契約の労働希望者がそれなりに居るのだとか」

アレクセイ様とヘルミーネ様が話しているのを聞いたのだけれど、地方から仕事を求めて、出稼ぎに出て来ている人が一定数いるそうで、今期は特に多くの人がこのリードルフに来ているらしい。

人手はあるはずなのだ。

私がそんな事を知っているとは思っていなかったのか、院長が顔を歪める。

「それは……確かにそうなのですが、」

「何か、問題が?」

「いえ、ですが環境を即座に変えるという事は、なかなか難しいことです。いくら公爵夫人の意向と言えど、私としてはまずはヒルト男爵に承認を得る必要が御座いますし……」

長々と続きそうな、改善できない言い訳を、私は遮った。

「これは私の意向と言うよりフェルザー家の意向と考えてください。そう考れば、フェルザー公爵の部下であるヒルト男爵の許可を得る必要は無いはずです」

「……この事は公爵閣下はご存知なのですか?」

「勿論。夫は子供の件については私に任せてくれています。ですから私の言葉は公爵家の意向になります」

はっきりと言い切ると、ハルトマン院長の顔色が悪くなっていく。

苛立ちからか、今後の予定が狂ったことへの戸惑いからかは分らないけれど、時折見せる鋭い目はイザークの言う通り、穏やかな聖職者には見えなかった。
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