強引ドクターの蜜恋処方箋
6章
4月に入り、緊張して起きる朝が続いている。

通い始めたのは市内の看護学校。

会社を辞める時、同期のユカに「どうしてどうして?」としつこく聞かれて、しょうがなしに看護師になるために看護学校で勉強するんだと答えた。

ユカに「まさか、イケメン医師を捕まえようって訳じゃないでしょうね?」と軽くにらまれたけど、私の新しい門出を一緒に祝ってくれた。

そして、私を贈る言葉は、「もし医者と結婚するなら、絶対医者の友達紹介してね!」って。

ユカらしくて笑えた。

今まで働いていた職場での出会いや経験は、きっと私のこれからに繋がる。

雄馬さんもそう言ってたように。



雄馬さんは、T大病院で研修医として勤務し始めた。

当初から言ってた通り、研修医はいきなりの激務で、毎日早朝から夜遅くまで病院にこももり、土日の休みもほとんどなかった。

こんなに近くにいるのにまるで遠距離恋愛しているみたいな私達。

手が届く場所で会いたい時に会えないっていうのがこんなにも切なくて、辛くて、苦しいものなんだって知った。

「もっとゆっくり会いたい」ってどれだけ言いたかったか。

でも、不器用な私はその気持ちがなかなか伝えられなかった。

雄馬さんも忙しい中、早く帰れる時は帰って来てくれてるのがわかっていたから。

かくいう私も学校が始まってからは、初めてのことばかりで緊張の連続。

全く余裕のない毎日だった。

帰ってから晩御飯の用意をするのもしんどくて、気付いたらいつも寝てしまっていた。

ふと、大学時代を思い出す。

もう10年近くも前のことになるんだと思うと、一瞬焦るわけで。

看護学生達のほとんどは高校卒業したての若い子ばかり。

たまに20代の転職組みもいたけれど、やはり自分が浮いた存在にはなってるのは否めなかった。

でも若い学生達は、私を同期として受け入れてくれて、久しぶりの学生生活を楽しく過ごしていた。


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