紅の葬送曲



──犯人は現場に戻ってくる。




そんなことをよく刑事ドラマや小説でみみにしたり、目にした。





実際にそんなことがあるのかと信じがたかった。





現場に戻れば、何らかの理由で自分の痕跡が残っているかもしれない。





残っていれば、自分に容疑が向けられる。





そんな危険を犯してまで現場に戻る必要があるのだろうか?





ドラマや小説の中だけだろうと思っていた。




──そう思っていたのに、私達がこれから追うであろう犯人が犯行の現場に戻り、今目の前にいる。




「飛んで火に入る夏の虫って言うが、まさにそれだな」




寿永隊長は皮肉を込めながらそう言うと、腰に着けたホルダーから拳銃を取り出した。





そして、その銃口を目の前の犯人──紅斗に向ける。





「怖いなー、一般人に拳銃を向けて良いの?」




「ほざけ。堂々と防犯カメラに自分の顔を映して殺人を犯し、現場に戻って名乗るなんて挑発じみたことを一般人がするかよ」





飄々とする紅斗に対して、寿永隊長の様子が何処か変だ。




言い表すには難しいけど、妙に殺気立っているように感じる。






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