元社長令嬢は御曹司の家政婦
「......分かったわよ!
早く起きたらいいんでしょ!
ただし朝食のクオリティは保証しないわよ?」


私にはたっぷりの睡眠時間が必要だけど、それと同じくらいに、いいえそれ以上に豊かな暮らしが必要。

豊かな暮らしを交換条件に出されては、背に腹は変えられないわ。


「それでいい。
たとえ結果が伴わなくても、努力しようという気がある人間は評価させてもらう」
 
  
むっとしながらも白旗をあげると、秋人は満足そうに頷いてから椅子から立ち上がる。後はよろしくと私にお皿を押し付けて。


「ああ、それと、君がこの一週間で壊した家電の数々、被害を与えた洋服類の修繕費は、全て俺持ちだ。君へ支払う給料から天引きしようだなんてせこい真似はしないから気にしなくていい。
一体どうしたらそこまで物を壊せるのか、俺も楽しませてもらってる」
   

思い出したようにそう付け加えると、小さく笑った秋人を見て、思わず全身の血が沸騰しそうになった。

本当に嫌味な男ね......!
この私に雑用家事をさせようだなんて人間は、あなたが初めてよ。

そこら辺の庶民と同じようなことをさせられることに憤りを感じながらも、私がどれだけ失敗しても「そうか」とたった一言で済ませる秋人にはいつも複雑な気持ちにさせられる。

私に手を出すわけではないのに、私を追い出そうともしない。何を考えてるのか全く分からないわ。


秋人が出ていった後のリビングで小さくため息をついてから、乱暴にお皿を洗い始めた。



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