クールアンドドライ
無能上司
 「滝本さんには、来月から営業をしてもらいたい。三課に入ってもらうから、そのつもりで。」
 普段、あまり接点のない部長にそう言われ、「わかりました。」と言う以外、なにも言えなかった。
何で私なんですか?そう聞きたかったが、聞ける雰囲気じゃなかった。
もう、これは決定事項なのだろう。
部長の態度には、どんな言い分も受け付けない!という強い意志が感じられた。

 私、滝本咲希(タキモトサキ)が勤める(株)OOKIは、主にプリンターや複合機を扱う会社で、営業部は三課まであり、一課は、大手企業や大口のお客様を相手にしている。
二課は、紙ではなく、布や食品用のプリンターを扱うお客様を相手にしている。
そして三課は、その他のお客様を幅ひろーく相手にしている。
 
 小会議室を出て、自分のデスクに戻りフロアを見渡す。
二階が全て営業部になっている。
だだっ広いフロアの所々に、棚や衝立が置かれていて、仕切りのようになっている。
 私は、営業事務なので、奥まったスペースの片隅に私のデスクが置かれている。
 少し離れた所に、三課のスペースがある。
そっちの方向を見ると、今日は外回りの人が多いのか、閑散として見えた。

 正直、三課には、良い印象がない。
その原因は、怒鳴り声だ。
何時も怒鳴り声が聞こえるのは、三課の方からだった。

 はぁー、せっかく実家を出たのに、もう来月には、怒鳴り声が響く渦中に行かなくてはならないのか。
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