ロング・バケーション
彼の提案に悪ノリしちゃえ!
ゴールデンウィーク、お盆、オータムウィークにクリスマス……そんなもの全部なかったけど、今日も笑顔でお仕事……



「…な訳ないでしょ!」


年末も押し迫ってきた頃、私は医務室でブツクサと文句を垂れていた。


「全くどいつもこいつも浮かれて〜〜!」


ガシャガシャと経管患者用の薬や酢水を通す注射器を洗っていた。頭の中では、さっき聞いた若い女性職員の話が巡っている。



『イブにカレシと水族館に行ったんですよー。可愛かったですよー、ラッコ』
『街中もイルミネーションがキレイで、カレシと手を繋いで歩いたの』


きゃっきゃっと弾けんばかりの笑顔を振りまきながら聞かされた惚気話。




「こちとらずっと仕事だったわよ!」


どうせ彼氏もいませんよ!と半ギレ状態の私は野々宮凛(ののみや りん)。二十七歳。老健施設で働く中堅どころの准看護師だ。


中堅どころというのは損だといつも思っている。
何かというと上司や後輩の看護師に仕事を依頼され、やたらと忙しい日々を送らされている。


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