ロング・バケーション
熱い夜にときめいちゃう…
部屋に入るとドクターに座っていて下さい、と言い渡した。
それから洗面所で手を洗い、うがいをしてからキッチンに立つ。

冷蔵庫には実家から貰った鮭の切り身が入っていた。
それを忌々しく見つめながらもレンジに入れ、解凍しながら野菜を切り出す。


「手伝おうか」


落ち着かないのかドクターがそう言って立ち上がろうとした。


「いいから座ってて下さい。そんなに手間暇かけた物なんて作りませんから」


変に自慢する言葉を返し、私は黙々とネギや白菜を刻む。
実はこれらも実家から貰って帰った物で、しみじみ自分では買い物もしていないな、と考えた。


野菜を刻んだ後は、シンクの下からつい最近使用したばかりの土鍋を取り出す。

ドクターにとってはまた鍋物かと思われそうだけれど、簡単で素早くできるものと言えば、雑炊くらいしか思い浮かばないのが私だ。


(カッコつけても料理出来ないのがバレるだけだし)


自分ができる範囲のことをすればいいと頭を切り替え、さっと出汁を取った後は、グツグツと野菜を煮込みながら解凍した鮭をレンジで蒸し焼きにして解した。


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