美意識革命
優しさはぬくもり
― ― ― ― ―

 6月になった。6月は色々な意味で苦手だ。まず雨で持ち物が濡れるのが好きではないし、気圧の変化に負けて頭が痛くなるのも困る。おかげで頭痛薬は欠かせないし、かといって飲みすぎると身体に耐性ができて効きが悪くなる。
 身体の調子はあまりよくないが、ジムには行き続けている。森とはそれ以降、飲みに行くということもなかったし、間違ってスーパーで会うなんてこともなかった。

「はぁ…。」
「お疲れでしたら、早めに休んだほうがいいですよ?」
「…あ、いえ、疲れてるわけでは…。」

 疲れているわけではない。単純にこの季節にやられている。それと、頭痛によってちょこちょこでてきてしまう仕事のミス。それらが積み重なって、少しずつ由梨にダメージを与えてくる。

「顔色、悪いですよ?」
「…今日は切り上げます。」
「ぜひそうしてください。…心配です。」

(…顔色までは全然チェックしてなかった…。森さんにばれてしまうってことは相当具合悪そうなんだな…。)

 少し反省して、目の前の森を見つめた。

「…すみません。帰ります。」
「お疲れ様です、九条さん。」
「お疲れ様でした…。」

 今日は全然疲れてなどいない。ただいつもよりもズキズキと頭が痛い。それに外は土砂降りだ。いつもよりも寒く感じる。

「…はぁ。だめだなぁ、ほんと。」

 寒いのと頭が痛いのと、ミスが続いているのと。よくないループから抜け出せたかと思いきやすぐにこれだから情けない。せっかく森と話したことで、少し迷いがなくなった気がしたのに。

「…また弱くなっちゃいそうで嫌だな、この雨。」

 そういえば、ラインが途絶えたあの日も雨が降っていた。やっぱり雨は苦手だ。
< 24 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop