別れる前にしておきたいこと ー Time limited love ー
まさか恵理よりも早く結婚することになるとは思わなかった。

『父さんに次の手を打たれる前に』と、翌週には婚姻届を提出し、私たちは夫婦になった。

証人は晴くんと友香にお願いした。

秋は会社を辞めるつもりでいたようだけど、息子たちに会社を継いでいってほしいという社長の思いは変わらないようで、秋が専務になる話はそのまま進むことになった。

ただし、晴くんに政略結婚を強いたりしないという条件で。

私の辞表は晴くんが手続きをする前に止めてくれていて、会社を辞めずに済んだ。

来春までは、私たちは今まで通り通信販売事業部で一緒に働くことになる。

秋が専務になって本名の『七橋』を名乗るタイミングまで、私たちの結婚は秘密だ。

だから、私たちの結婚を知っているのは、今のところ社員では友香と葉山だけ。

晴くんは会社を休職してしばらく旅をするのだと言っていた。

メチャクチャな息子たちに社長は頭を抱えていたと、秋は笑った。


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