《クールな彼は欲しがり屋》
本日は台風がやって来そうです

和泉さんが予約してくれた汐留シティセンター内にあるイタリアンレストランに来ていた。

「和泉くん、何人で予約入れたの?」
個室に通されてすぐに佐野さんが口を開いた。

ピアノみたいに光沢のある長いブラックテーブル。
コートを脱ぎながら私も何気なくテーブルを眺めてみる。
セッティングされているのは、6名分だ。

「6人ですよ」

「なんでよ。1人多いじゃん。沢田課長は来ないんでしょう?」
一番奥の壁際に近い席にいち早く座った佐野さんは、隣の椅子を引き、私に座るよう目で合図した。

「失礼します」
促された通りに佐野さんの隣に私が座り、私の隣に的場さんが座った。向かい側の壁から近い席に和泉さん、隣に江波さんが座る。

一席、的場さんの向かい側の席が空いていた。

「いえ、ぴったりですよ。来ますから沢田課長」
和泉さんが、のんびり答えた。

「はぁ?」
その場にいた全員が和泉さんを注目した。

「え、じゃあ....真ん中空けときます?」
そう言って江波さんが隣の席に移動した。

「なんで今日は参加なんですか?よっぽど暇なんですかねぇ」
的場さんがスマホをいじりながら呟いた。


嘘っ、来ないと思ってた。

ということは....。


冷や汗がたらりと背中をつたう。
私の真ん前の席は、空席になっている。

従って私の目の前に沢田課長が座る。そういうことになりそうだ。
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