イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 


……落ち着け私。きっと大丈夫。

動揺する自分にそう言い聞かせた。


拓海はモテるし、女の子から誘われることなんてよくあることだ。
ベッドの上まではいったけど結局は未遂だし、たくさん恋愛経験のある拓海にとっては、あんなことなんでもない出来事のひとつで、きっとすぐに忘れちゃうんだ。


だけど……。

さっきまでのことを思い出して、鼻の奥がつんと痛くなった。
頬に触れた唇の感触。
抱きしめた長い腕。
熱を持った息遣い。
たくましい体の重み。


ずっと好きだった拓海の、はじめてみる男の顔を、私は忘れられそうにないよ……。

うつむくと、眼鏡のレンズにぽたりと一粒涙が落ちて、視界が潤んでぼやけた。





 


< 42 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop