イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

「料理なんて大嫌いだけど、チャンスじゃん」
「チャンス?」
「拓海くんを落とすチャンス」
「落とすって」

意味が分からず里奈の言葉をただ繰り返す。

「だって、あんな優良物件なかなかないよ? かっこよくて話し上手でいい会社に勤めてててセンスもよくて車も持ってて。彼氏にしたい条件、全部揃ってるじゃん」

当たり前のように指を折りながら条件を数える里奈に、私はさらに混乱して首をかしげた。

「彼氏にしたい条件って、単純に好きになった人が彼氏にしたい人でしょ?」

私がそう言うと、里奈は「うっわ」と顔をしかめて両手で自分の肩を抱いた。

「お姉ちゃん、二十五歳にもなってその少女漫画みたいな恋愛観は引くわ。恋愛下手すぎる」
「……恋愛下手で悪かったわね」

むっとして顔をしかめると、里奈が機嫌をとるような笑顔をうかべる。

「ってわけで、私拓海くんを狙ってるから協力してね、お姉ちゃん」

語尾にハートマークがついたかわいい口調で里奈は小首をかしげた。
里奈のぶりっこなんてすっかり見慣れているはずなのに、なんだか胸がもやもやする。

私は聞こえないふりをしてため息をついた。





 

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