見た目通りには行かない
溺愛開始


カツカツとヒールの音が廊下に響き渡っています


スラッとしたスタイルにふわっと髪を靡かせて歩く姿は男性社員を魅了します



「あれ、企画課の川口さん………あー、社長のところ?」

「あ、佐倉部長!お疲れ様です
……はい」


気まずそうに答える彼女に佐倉部長、営業一課の部長は頭を撫でてくれる



「宥めてやって」



先ほどちらっと見えた社長の姿は何だか物々しい雰囲気だったのを思い出しました


宥める?その言葉に首を傾げる姿を見て、こりゃ囲いたくなるなと苦笑いしてしまいます
社長の苦労も目に見えてきそう
仕方ない、周りの男性社員へも一喝してやるかと


「今日はもう、社長に可愛がられて来なさい」


少しだけ声を大きくしてわざと男性社員に聞こえるように言うのです


二人の噂を耳にしている社員が増えていることでしょう
その意味をわからないやつはきっと少ない


彼女は本の少し顔を赤らめてペコリと頭を下げて行ってしまいました

その後ろ姿は先ほどの可愛い姿とは違い、良い女の後ろ姿です

やれやれ、社長もほどほどにしてほしい


本の少し鈍感な彼女はこうやって周りに囲まれていることなんて知らないのです



彼女は社長室の前で一息ついてノックします


「どうぞ」の声は秘書である幸輝さんです

「失礼します」その声に飛んできたのは社長


急にぎゅっと抱き締められ戸惑います



「しゃ、社長?」

「今は二人きりだ!尊だろ」


いやいや、幸輝さんがいらっしゃいますから!
首を横に振れば、出ていけと言わんばかりの瞳で秘書である彼を睨み付けるのです



「へいへい」


最近では当たり前になりつつある光景のひとつです



「尊、ここではセックス禁止だからな!
麗ちゃんの香りが残るとこで仕事はしたくないぞ」

「だれがお前に嗅がせるか」


そう言って、ぎゅっと彼女を抱き締めます
そんなやり取りに彼女は顔を赤くして戸惑います



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