見た目通りには行かない







尊が猿になった、らしい







「なんで、お前がいるんだよ」

「麗と二人きりで会わせるはずないだろ」



はぁーとわざとらしくため息を吐いた
目の前には申し訳なさそうな川口麗


今日やっと、会うことが出来た


あの日、再会してからもうすぐ一ヶ月になろうとしていた


光輝や組長からもケツを叩かれ会うことになった
再会した時は会う気満々で光輝にもちゃんと話をするって言ったくせに、いざ尊の女になってしまうと躊躇した
悔しいとかではなく、幸せならそれで良かったから


でも、10年間の想いがあるだろうと光輝にはマジでケツを蹴られた


重たい腰を上げて川口に連絡して、会うことになったがまぁ、予想通り尊がいて
それも、また笑えた

尊がいるなら尚更、言ってやろう




「川口、10年前はごめんな」

「先輩……」


先輩、かぁ
なんか不思議な響きだった


「ぐっ……」



変な声が隣から聞こえて見れば、尊が口許を押さえながら顔を赤くしていた

「やべ、かわいい」蚊の鳴くような声でそう言った
いや、実際蚊の鳴き声なんてしらないがまさに今の尊だ
何か突っ込んでやろうと思ったが面倒臭そうなのでやめた






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