初恋にふさわしい人を待っている。
王子様の本性
混乱した私をよそに、他の生徒は書き終わっていて、先生に提出していた。

「なんて書いたのー?」

「えー教えないっ」

近くの席の女子がくすくす笑いながらおしゃべりしている。たぶん、先生にアピールするようなことを書いたのだろう。対して私は、必要項目は書き終わっているが、先生に言われたことが引っかかって提出できないでいる。

「秋月先生ほんとかっこいい」

「まじ王子様」

私もそう思っていました、数分前までは。

愛の告白、しても良いんですよ?
なんて甘く囁いておきながら、言葉とはまったく正反対な表情で私のことを馬鹿にしたんだ。

きっと先生は今までもずっとモテてきたんだろう。だから女生徒全員からも無条件に好かれると思っている。

そう思ったらなんだか腹が立ってきた。衝動のままにシャーペンを握り直し紙の隅っこにとある言葉を書く。

「秋月先生、書きました」

「ありがとう」

ちらっと見れば、やっぱり他の生徒に向ける眼差しと違って意地悪な顔をしていた。その余裕そうな面、今に引っぺがしてやる!乙女の純情を踏みにじりやがって!

『愛の告白?セクハラしないでください』

どうやら隅っこの文字に気づいたようだ。顔を引きつらせている。

「東雲さん、昼休みに国語準備室で手伝いをお願いしても良いですか?」

や、やってしまった––––!!

顔は笑っているが目が一切笑っていない。そんな器用なことができるんだなぁ、と一瞬思ってしまった。

「も、もちろんです!」

私も精いっぱいの笑顔で返した。
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