次期社長の溺愛が凄すぎます!
傲慢なシンデレラはガラスの靴を履かない
***


すっかり春は過ぎ去り、暖かい風が気持ちいい季節。

朝一のミーティングが終わって会議室からの帰り道、会社の廊下から見える緑の景色に立ち止まり、微笑みながら目を細める。

どんどん昼が長くなっていくよね。

そんなことを考えながらぼんやりしていたら、肩をポンと叩かれた。

「斎藤主任。今日はいつも以上に可愛らしい格好をしていますね」

どこかニヤニヤしている原部長を振り返り、とっておきの愛想笑いを貼り付ける。

「原部長~? 私、セクハラで本社に訴えてもいいですか?」

「……それはやめてください」

困ったような苦笑いを返されて、私も苦笑を返す。

そりゃ可愛い格好だってしますよ。今日は藤宮さんに食事に誘われていますので。

お出かけするときくらいはおしゃれをするのが礼儀です。

ちょっとメイクも変えてみたんだけど、原部長、目敏いんじゃなかろうか。

「ちょっと僕はこれから営業部に顔を出してから戻るので、何かあれば内線よろしく」

頷いてから原部長と別れ、総務部に戻ると、三島さんがデスクから立ち上がった。

「斎藤主任。経理が去年の総会のデータが欲しいって連絡入っているんですが、探しても共有ファイルにないんですよー」

「本当? ああ、でも、システム変えた時にどこかに紛れちゃったのかもしれないね」
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