社長は今日も私にだけ意地悪。
4.
どうしよう。先程入った一本の電話が私を悩ませる。


あの市民お花見祭りから一週間が経った。

芸能マネージャーの基本的な仕事は、担当アーティストのその日の仕事内容に合わせて動くこと。日によって様々な現場に出掛けたり、様々な対応をする。

だけど私が担当するRED searchは事務所に入ったばかりの新人で、今のところ残念ながら毎日現場に赴くような仕事はない……。

その為この一週間は、彼等とはオフィスで軽い打ち合わせを数度したくらいで、あとはメンバー同士で時間を合わせて練習をしてもらっていた。
私は私で、彼等との打ち合わせ等がない時間は佐藤さんにつき、彼から仕事を教わっていた。


しかし、彼等の仕事を増やすのはもちろん私の役目。しっかりと営業を掛けて、彼等を有名にしていかなければならない。


私宛てにその電話が掛かってきたのは、そんな矢先だった。


【先日、市民お花見祭りでライブを見せていただいた者ですが……】


それは、とある有名女性雑誌の編集の方からの電話だった。

その編集の女性は、たまたま市民お花見祭りに出向いていたところ、RED searchのライブを見た、とのことだった。


【依頼したいことがあり、どうしても連絡が取りたくて。市役所の方にお願いしてそちらの電話番号をお聞きしてしまいました】

「えっ、依頼?」

もしかして……仕事の依頼?


その予想は的中した。


【うちの雑誌では現在、〝これからブレイクしそうなイケメン芸能人〟という連載をしていまして、たった半ページではありますが、是非紹介させていただきたくて】
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