彼と愛のレベル上げ
そんな風に頭に浮かんでしまった事を払うようにしてアヤノさんに大学時代の事を聞いてみた。


「そういえばアヤノさんたちは同級生なんですよね?」

「ええ、と言っても私の彼と朔也が友達だったから知ってたっていうだけだけど」


え?彼と朔也さんが友達?
どういうこと?


「彼は高校の時の同級生でね、当時少しだけ付き合っていたの」

「あの時のアヤノはただの派手な女で近寄りたくもなかったから」

「あら、私だってそうよ、あの頃のあなたたちの周りはいつも女の子ばかりだったじゃない」


ズキン…


やっぱり大学時代から主任はモテてたんだ。


「あの頃堂地君はクールだなんて言われていたけれどただの冷たい嫌なヤツで、神代君は誰にでも良い顔をする八方美人だったわ」

「随分な言われようですね」


ほんとに。
クールなだけじゃなくて嫌な奴とまで言い切ったアヤノさん。
しかも自分の彼の事を八方美人だなんて。

でもきっとタイプの違う二人が並んでたらそれはもう、それだけで目立ったんだろうなぁと思う。


「でもね。桃華ちゃん――


不意に名前を呼ばれてアヤノさんの話しに耳を傾けた。


「久しぶりに会った堂地君の目がすごく優しくなっていたの。桃華ちゃんを見つめている時限定だけれどね」

「え?」

「さっきは監禁なんて言葉を使ったけれど、それぐらい愛しくて大切な存在だとわかるから」


愛しくて大切な存在。
本当、に?


「アヤノもたまにはいい事言いますね」

「そうでしょう?でも二人ともお互いに思ってる事は話さないとダメよ?離れているのだから尚更ね」

「モモが可愛らしいので、つい手出ししてしまうんですよね」


アヤノさんの前でもしれっという主任。
ほんとこの人は、自分を知っている人の前だと平気でこんな風に言うんだから。


「堂地君のその気持ちもわかるわよ、久しぶりに会ったらそうなるわよね。でも桃華ちゃんも聞きたい事、言いたい事はきちんと話さないとね?恋人同士なのだから」


言い聞かせるように優しく私にそう言ったアヤノさん。


「あのっ、アヤノさんは不安になったりしないんですか?」

「私?全くないと言ったらウソになるけれど、今は信じるしかないでしょう?」


――信じる

『純哉を「信じて」待っていてあげて』
……お婆様にもそう言われた
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