うさみみ短編集
飾る
「もう若くないわ。若い頃なんてあっという間よ」




テーブルに並べられたトマトソースベースのパスタをフォークに絡ませると、私はそれを口へと運ぶ。




白いパールの輝くベージュ調のルージュが落ちない様に、大きく口を開けてみたが、あっさりとトマトソースが口元に付着してしまっていた。





 こうして週一回、水曜のランチタイムは私たちの間では欠かすことの無い日課となってしまっている。





土曜日と日曜日以外の主婦仲間が集える曜日を唯一決めて、仲の良い仲間達と軽い談笑に華を咲かせるのが、私の憂さ晴らしの方法の一つであった。





朝のワイドショーが始まる前までに夫と息子を送り出してから、芸能ニュースを見ながら一人残った私は煎餅一つ齧る。





自分のミーハー部分を満たす為にとか、仲間との話題の一つでも持ち寄る手土産としての情報を仕入れては、こうして水曜の午後に他愛のない話題を持ち寄っては互いの価値観で討論し合うのだ。






単調な日々の中で、こうした他人から見れば、どうでも良い様な討論も今の私からすれば、貴重な時間の一つに組み込まれてしまっている。






それで、今回は自分の若い頃という討論なのだろう。






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