そのアトリエは溺愛の檻
秘密の時間外労働
普通のOLの傍ら、超有名売れっ子フォトグラファーのプライベート専属モデルになって早一ヶ月半。私の仕事は順調です。

倉橋のカレンダーなんてプロのアキからしたらボランティアくらいの価格で引き受けてくれたようで、会社の偉い方々が驚いていた。

しかも社長はアキから電話で「雨宮さんがとても丁寧に対応してくれて感謝している」なんて告げられたらしく、私の会社での株はうなぎのぼり。あぁ、次のボーナスが楽しみ。


いいことばかりのはずなのに、こんな風に天に向かって棒読みな自分語りをしたくなるのは、他でもない。あの男が原因だ。


ほとんど東京にいるから、最初の打ち合わせの以降、彼に会ったのは二回だけ。しかしその二回は両方とも狙ったように金曜日の17時からの指定だった。

その時間の外出はよほど緊急事態がない限りは、直帰が許される。そして倉橋は土日が休みだから、金曜の夜は遅くなってもそんなに問題はない。それを知っている重秋は、打ち合わせ後そのまま例の撮影を始める。


絶対に逃げられない誰にも言えない秘密の時間外労働だ。
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