20代最後の夜は、あなたと
「ね、ひどいでしょ?」


「うん、確かにひどい。


でも、飲みに行っただけで、何もされなかったの?」


「そういえば、誰も何もされてない」


「でもさ、何もしてないからいいってことないじゃん。


人の気持ちをもて遊ぶなんて、やっぱ最低だよ」


「でしょ、紗和もそう思うでしょ!」


奈緒に表面上は同意したけど、私には小さな違和感があった。


霧島課長は、美人と褒めただけで、ちょっと冗談で立候補なんて言っただけで、本気で誰かとつきあう気はなかったんじゃないかな。


あの容姿だし、モテないわけがないんだから、今はフリーを楽しんでるだけかもしれない。


奈緒に相槌を打ちながら、なぜか私は、霧島課長をかばうようなことばかり考えていた。


それは、あの笑顔がちらついていたからだと思う。


酔いつぶれた奈緒に毛布をかけ、私は明日の社内コンペのことを考えていた。


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